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知らない間に大人になりかけている。

子供の頃に感じた「遠い対岸に見える大人」に気がつけばなりかけている。

気がつけば難しい顔をしているし、ため息も一人前に吐いている。

やたらにアクアリウムを始めてみたいし、綺麗な色の魚より
コラドリスやエビなんかにそそられる。

見かければ無邪気に一緒に暮らしたいなと思っていた犬や猫は
いろいろ考えると現実的でなくて諦める。

自由をかみ締めていた休日もなんだかんだあるし、
家族からもいろいろな用件で電話がかかってくる。

でもまあ、それなりに楽しくやれているし、
今いるところも「悪くない」と思えるから。

変わったら、変わったでいいことも悪いことも
同じぶんだけやってくるだろうから。

大切な何かをなくしても、自分の居心地とその他の世界の求めるものの間で
バランスをうまくとっていれば血だらけの傷口にかさぶたができて
もっと強靭でしなやかな細胞が生まれてくるはずだ。


何せみんな生まれてこのかた、失敗を繰り返して傷だらけになりながらも
血反吐を吐いても、起き上がり歩いてきたのだ。

今、生きているとはつまりそういう結果として強くなった結果なのだ。

明日はもっと強くなる。今日よりずっと。